“世界一着陸が難しい空港は?”
ひと昔前なら、超高層ビルの上をかすめるように飛んで行く“香港啓徳空港”が、乗客が体感するスリル感からしても一番だろうが、1998年に新空港が完成したことで問題は解決。
それでは、現在最も着陸が難しいといわれている空港はどこか?
人によって意見はさまざまあるだろうが、概して名前が登場するのがブータン唯一の国際空港・パロ(PARO)だ。
パロは、ブータンの首都・ティンプーのすぐ西に位置する町で、海抜2,235メートルの高地(ほぼ富士山五合目)にあるが、周囲はヒマラヤの5,500メートル級の峰々が間近に迫っており、平地といえば山間を縫うように流れるパロ河沿いの谷底にある幅29メートル・長さ1,964メートルの滑走路1本のみ。
しかも、空港には管制施設がないため、今だに日の出から日没までの有視界飛行のみという、パイロットにとっては神業レベルの非常に高度な技術が要求される空港だ。

狭い谷底にあるパロ空港
滑走路を挟みこむように続く山々は、パロ河の流れに沿って右に左に曲折しているので、着陸を控えて高度を下げた航空機は、その狭い谷間を大きく右に左に旋回しながら高度を下げていく。
座席の窓からはすぐ真横に山肌が迫り、段々畑で農作業している農民の表情がわかるほど。
今にも翼が山肌を削ってしまうのではないかと心配になるほどの狭い谷間であることに加え、当然ながら飛んでいる方向の景色が見えないだけに余計にスリルがある(一応、これまで事故はないらしいが)。

ここから谷間に降下して行く

間近に見える段々畑と民家
時折、上昇気流なのか、“フワリ”と機体が浮き上がったり、逆に“ストン”と一気に下がることもあり、その度に乗客からは“おお〜っ”とか、“うわぁ〜っ”という声が漏れ、この緊張感はなかなか味わえるものではない。
そして、20分ほどのまさに“ジェットコースター”のようなアプローチを抜けて、無事パロ空港に到着すると、“よく頑張ったね”とばかりに、ワンチュク国王と王妃が笑顔で出迎えてくれる。

パロ空港到着

国王夫妻がお出迎え
因みに、このパロ空港に着陸できる資格をもつパイロットは、世界に8人(4人とも)しかいないと言われているが、そのほとんどがブータン国営のドゥルク航空(DRUK AIR)に在籍しているそうで、そのためパロに就航している国際線の航空会社はこの1社のみ。
東日本大震災後に夫婦で来日して話題になった王妃の父親も、もとはドゥルク航空のパイロットだったとか。

ドゥルク航空のシンボルは雷龍

機内食はインド風だが、レベルはかなり高い
天候が安定する春や秋のシーズンになると、座席の確保もなかなか難しい航空会社だが、世界一着陸が難しいといわれるパロ空港への手に汗握るアプローチや、機内から遠望するヒマラヤの7,000メートル級の山々は、一度は乗ってみる価値あり!

ヒマラヤ遠望

世界3位8,586メートルのカンチェンジュンガ

ヒマラヤの大パノラマ 【拡大写真】
|