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■そして、チャルクリクを出発して3日目。ようやくロプノールの干湖底へ到達。
かつての楼蘭国の繁栄は、豊富に水をたたえたこの湖があったからこそであり、歴史から突如姿を消した楼蘭国滅亡のきっかけは、この湖が “移動” したからだと言われている。
天山山脈から絶えず吹きつける北東からの強風がタクラマカン砂漠の微細な砂に影響を及ぼし、この湖は数百年の周期で移動していたというのが現在では通説になりつつある。
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このあたりの話は、私が説明するよりも、スウェン・ヘディン著の “さまよえる湖(岩波文庫)” や、井上靖の “楼蘭(新潮文庫)” を読んでいただいた方がわかり易い。
当時、湖畔には葦が青々と生い茂り、鯉に似た巨大な魚を求めてたくさんの漁民がカヌーに乗って湖面を往来したロプノールは、現在は地表一面に残っている貝殻でしかその姿をうかがうことができないが、見渡す限りに広がる地平線は、その湖の大きさを想像するには十分だった。
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そして、チャルクリクを出発して5日、日本を出発して10日目。 その特異な景観が巨大な龍の背びれを思わせることから “白龍堆(はくりゅうたい)” とよばれる風蝕地帯・ヤルダン(雅丹)へと入って行く。
かつてここを行き交ったキャラバンはそのあまりにも苛酷な地形に方向感覚を失い、無数のラクダが力尽き、そしてたくさんの人命が失われていった。
“一度入ったら二度と出られない” タクラマカン砂漠で最大の難所に挑む。
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